井上荒野を6冊読む
『切羽へ』で直木賞を獲った井上荒野が気になって何冊か読みました。
読む本のネタがなくなると直木賞作家をかたっぱしから読む癖がついています。
半年前に読んだ作品
『しかたのない水』(2008年・新潮文庫)
スポーツクラブ(中でもプール)に通う老若男女の連続短編小説。
これは面白かったです。
最初は文章が上手いだけで退屈なお話かと思ってたんだけど、
人と人とがこんなにも近くですれ違ったり行き違ったり、
という変なドキドキや、色んな年代の心理描写がよかったです。
特に最後の2つのお話は異空間にボンと放り出されたような気持ちになります。
最初はあんなにも退屈で日常だったのに、ドキドキと非日常になるんです。
『潤一』(2006年・新潮文庫)
これは、私は苦手だったー。
島清恋愛文学賞を獲った作品だったから期待してたんだけどね。
江国香織も『がらくた』で受賞してました。
潤一がいろんな女性の所に現れて一悶着あるんだけど、
女性の視点から潤一について語られる短編の寄せ集めです。
どうも潤一に人間味が感じられなくて、まるでアニムスみたい。
もしかしたらアニムス、っていうのが主題だったのかもね。
でも、井上荒野の小説には必ずこういうタイプの、というのは、
あんまり意思がなくその日暮らしなのに、女にはついて行く、
っていう男性が出てくる気がします。
3ヶ月前に読んだ作品
『ナナイロノコイ』(2006年・ハルキ文庫)
女性作家のアンソロジー文庫本にも井上荒野がいました。
『帰れない猫』という短編小説です。
うーん、またこのモチーフかぁ、といった感じです。
浮気とか夫婦間のずれとか習慣とか。
確かに文章は上手いんだけど、読んでて印象に残らない、というか
暗いというか、楽しくない、というのが正直な感想かな。
江国香織の作品が読みたくて買った本だから別にいいんだけど。
1ヶ月前に読んだ作品。
『夜を着る』(2008年・文藝春秋)
図書館にたまたまあったから借りた作品。
あとがきを読んで初めて「旅にまつわる短編集」だと気づきました。
そうか、そういえばみんな大なり小なり遠くへ行ってますね。
だからといってワクワクするわけでもなく、うーん。
文章は上手いんだけど、ってそればっかり言ってますね。あは。
荒野という名前の人にワクワクを求める私がいけないんですよね。
『学園のパーシモン』(2007年・文藝春秋)
これも図書館にたまたまあったから借りた作品。
きたきた、これはおもしろいぞ。
途中まで最高におもしろいです。
幼稚園から大学まで同じ敷地内で一貫して教育する「学園」があり、
そこの学生はみんな学園長を慕っている、という不思議な舞台設定があります。
そして、その「学園」には赤い手紙が来たらすごいことが起こる、
という言い伝えがあるんです。都市伝説ってやつですね。
学園長が病気のため刻々と死に向かう中、
赤い手紙が来た女生徒、訳ありの男子転校生、生徒と関係を持つ美術教師、
天才的に絵が上手いのにいじめにあっている女生徒、の4人が交互に話を進めます。
「途中まで」最高におもしろい、というのは、
ミステリー感覚で読んでしまうと失敗する、ということです。
詳しい内容はここでは語りませんが、きっとテーマは「噂」です。
それを頭の隅においてもらえれば、きっと最後まで最高におもしろく読めると思います。
今日読み終わった作品。
『不恰好な朝の馬』(2006年・講談社)
これもラッキーなことに図書館にあったから借りました。
この話の設定は『学園のパーシモン』につながる所があります。
かぶっている、といってもいいのかな。
最近は同じモチーフを違う作品で繰り返し使う、っていうのが主流になってきてますね。
村上春樹もそうだし吉本ばななもそうだし。
それが作者の個性になっているのかな?
それが心地いい人もいるだろうし、別のモチーフをもっと出して欲しい
という人もいるでしょう。
私としては同じモチーフを出してくるとニヤリとしてしまうけど、
やっぱり新しいモチーフも出して欲しいな。
この話の場合、団地が舞台なんだけど、奇妙なポスターが張られる所が
次作とかぶってますね。教師との恋愛とか高校生の描き方とか、
やっぱりどっかかぶってる。不穏な空気は荒野の作品全体にかぶってるけどね。
はぁ、やっと井上荒野を大体読み終わったので、
(本当は『切羽へ』『ベーコン』『誰よりも美しい妻』が読みたい)
明日からは東野圭吾を読みます。
奇跡的に図書館にありました。
有名な作品は手に入りにくいけど初期の作品は借りやすいのです。
そして早く村上春樹の新作『1Q84』と小川洋子の新作『猫を抱いて象と泳ぐ』
を読みたいです。多分2年後くらいになるのかな(笑)
社会人になってもハードカバーには手が出ないです。文庫ならすぐに買うけど。
そういえば、江国香織の『左岸』をまだ読んでいないことに気づきました。
血の気がひきそうです。そろそろ読まなきゃ倒れちゃう。
SPURで連載している『抱擁、あるいはライスに塩を』も断片だけ読みましたが、
すっっっごくおもしろかったです。
同じ主人公でも時代によって留学していて住んでいる国が違ったり、
恋人が違ったり家族がいたり友達が違ったり窓から見える景色が違ったり、
そんなお話を書いていました。早く読みたーい。





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